チョイノリ委託整備 あんちゃん号①分解・原因精査
このブログを閲覧してくれているチョイノリスト「あんちゃん」さんの所有機体の調子が悪いとのことで整備相談があり、何度かコメントでやり取りしていたのだけれど、どうもエンジン内部のトラブルの様子。
自分では整備が難しいとのことなので、エンジン送ってくれたら、こちらで診ましょうか?とお話ししたところ、
それなら機体まるごと持っていきますとおっしゃられたので、引き受けることにしました。
メールでやり取りして日取りを合せ、同じ兵庫県の伊丹市からミニカトッポにチョイノリを載せて来られました。
イエローのK3です。カッティングシートとシートカラーがおしゃれですね。
兵庫県のチョイノリストとは初顔合わせ。同県に生存機体があったことに感動です。
(同じ兵庫県とはいえ、伊丹と姫路ではだいぶ距離はあるのですが…)
もともとはオークションで購入された車体で調子よく走っており、「あんちゃん」さんの彼女さんに譲渡されたあとは「のりこさん」という名前を付けられて大層可愛がられていたようですが、
ある日突然、走行時に急にエンジンが止まってしまったとのこと。
その後は、何とかエンジンはかかるが、マフラーからは大量の煙が排出され、回転数が上がらずアクセルをあおっていないと止まるという症状。
試しにエンジンかけてもらいますと。
わかりますかね、白煙吹いています。
写真で白煙を撮ろうとしても、なかなか撮りきれません。実際はかなりのモクモク状態で周辺が煙だらけになる重症でした。
実ははちまるは白煙症状の経験がなく初めて見たのですが、煙のすごさとオイル臭い匂いを嗅いで、即、燃焼室へのオイル混入と判断できました。
これはすぐには直せないのでお預かりすることになり、ウチの林道機などをお見せしたりチョイノリ話題で楽しくお話しした後、伊丹市へ帰宅されました。
さて、状況を確認していきましょう。
エンジンはK3初期型です。マフラーが錆び錆びですね。
話によるとサンポールアタックをかました後に、そのまま放置して錆びてしまったとのこと。
マグネトケースのチェーン接近部に破損はありませんでした。
チェーンはだいぶ錆びていますが、固着や伸びはなく、洗浄でいけそう。
安価整備を心がけます。
フロアボードがボロボロで割れていました。
外してエンジンと対面。
キャブのチョークワイヤーのキャップ部分に亀裂があります。
二次エア吸いの原因になるので、要交換ですね。
燃焼室にオイルが入っているということは、「オイル上がり」か「オイル下がり」です。
エンジンばらさないといけないのは確実なので、有無を言わさずエンジン降ろし!
プラグを外すとこんな感じ。
うっへーオイルがベットベト。プラグ穴からオイル垂れてくるし。すげーなこりゃ。
やはり燃焼室にオイルが侵入していたようです。
ヘッドを開けると赤丸のようにオイルがたまっています。これだけオイルがたまっていたら、
適正な混合気にならないでしょうし、オイルが燃えて白煙吹くのは無理もないですね。
ヘッドもカーボンが厚く堆積しています。
綺麗に掃除しないといけませんね。
オイル下がりかと考えてバルブ軸を計測しましたが、規定範囲内でした。
バルブシールは交換することにしますが、オイルは下から上がってきたのかな。
外したヘッドを見てみると…
マフラー取り付けボルトがブチおられています。
いやーマフラーが一本のボルトで留っていたので、怪しいなーと思っていたのですよ。
見事折れてますね。
ヘッドを新しく買うのは高額なので、なんとかリカバーしないといけませんね。
ふーー これ大変なんすよ(T∀T)
さて、オイルは下から上がってきている可能性が高いので、シリンダー方面をよく観察してみましょう。
洗浄後の写真ですが、ピストンを上下させてみると赤丸の部分にオイルの筋が残っているのがわかりますでしょうか?1stか2ndのピストンリングのヘタリで切り欠き部分のオイルが擦り切れていないようです。
オイル上がり決定ですね。。。
抱きつきでピストンに傷がついていたり、シリンダーに破損があったら高額修理になっちまう。
最後までばらしてピストンを診にいこう。ドキドキしながら分解を続けます。
駆動系をばらします。
プーリーストッパーがついていますね、これは初期型限定の装備です。リミッターとして機能しちゃうので赤丸3個のネジを外してストッパーを除去しておくことにします。
(後期型では純正状態でストッパーは省略されています。)
ジェネレーターを外したところ、フライホイールマグネトに数カ所、丸く表面を削り取った跡があります。
なんじゃこりゃ?
バランスを取るため?軽量化?
カムを見ますと、予想通りの偏摩耗。
前期型ではだいたいこんな感じに減っていますよね。減りは軽度で全然大丈夫な範囲ですが、せっかく開けたこの機会に新品に換えること二しましょう。
クランク割ってピストンにたどり着きました。
おおーーやった!ピストンに傷なし(^^)シリンダーのクロスハッチも大丈夫そう。
2ndリングの切り欠き幅が4.2mm以下になっていたので、2ndリングのヘタリが原因ですね。
よかった、これなら安く直せるぞ。
このエンジン、初期型でピストンリングがへたるまで運用されていた車体の割にはエンジン内部が非常に綺麗でした。オイル交換をこまめにされていた賜物でしょう。頑張って再生することにします。
まとめ。。。
トラブルの原因
ピストンリング(2ndリング)のヘタリでオイル上がりを起こして白煙&始動不能
エンジン復帰のための補修必要個所
1、チョークワイヤーゴムキャップ交換
2、ピストンリング交換
3、吸気バルブシートのオイルシール交換
4、カム交換
5、ヘッド マフラー取り付け穴補修
6、プーリーストッパー除去
7、チェーン洗浄
8、マフラー錆びとり
これくらいかな。
「あんちゃん」さんに必要パーツ価格を連絡し、補修メニューを相談。
あとからできる簡単な整備(フロアボード交換など)は御自分で徐々にされるとのこと。
エンジン内部のオーバーホールと、
エンジンを開けたこの機会にロッカーアームの後期型パーツ換装を希望されたので、そのメニューで行くことになりました。
ということで
9、ロッカーアーム一式 後期型換装
サイクルワールドにパーツ発注して、一休みです。